選挙とか、国籍とか。

先週の日曜日は選挙がありました。今回の選挙では、外国籍の私にも投票所入場券が届きました。と言ってももちろん欧州議会議員や市長の選挙ではなく、Integrationsrat(統合協議会)の構成員を選ぶ選挙です。統合協議会とはどうやら在住外国人の代表らしい。日本語の説明はこちらをご参照ください。

一般の選挙は政党や候補者のポスターが町に貼られたり街角で選挙キャンペーンが展開される一方、マイナーな統合協議会選挙はテレビで党首討論会が観られる訳でもなければ、候補者が駅前で演説をする訳でもなく、ましてや選挙カーが「よろしくお願いします!」と叫びながら走り回る訳でもありません。要するに情報が全くない状態で「選挙に行っても意味ないよナー」とは思いましたが、好奇心はあったし、家族で外出した帰りに投票所に立ち寄ったので、ついでに(?)ドイツの選挙を体験してみました。投票所が近所の小学校だとか、投票用紙をもらってブースで書き込むとか、基本的に日本の選挙と似ている印象。今回は欧州議会と地方自治体の選挙が重なったため、夫が受け取った投票用紙はなんと5枚!夫いわく「こんなに多いのは初めて」。一方、私が受け取った統合協議会の投票用紙には、ロシア、トルコ、イタリア、中国、クルド人らしい団体や代表の見たこともない名前がずらーっ。次男が「ママ~、なにしてるの?」と訊いてきたので、「どれを選んだらいいかよくわかんなくて困ってるの。」と正直に答えたら、次男が部屋中に響き渡る大声でパパにドイツ語通訳してしまったので、赤っ恥をかきました・・・。



私は日本国籍のみを持ち、日本の選挙に参加する権利を持っています。つまり日々の生活はむしろドイツの政治に影響されているものの、居住地であるドイツの選挙権は持っていない一方で、住民票のない日本の政治に一票を投じる権利はある訳です(ただしドイツでも、外国籍住民にも地方選挙の参政権を与えるべきだという議論はあるらしい)。

国際カップルの間に生まれた子供の国籍は、各国の法律(血統主義/生地主義、婚姻関係の有無など)によって決まります。例えばうちの子供達の場合は、婚姻関係にあるドイツ人の父親と日本人の母親の間に2007年以降に生まれ、日独の二重国籍を持っています。しかし残念ながら、現在の日本の法律では、22歳に達するまでにどちらかの国籍を選択しなければいけません。ちなみにドイツでは、血統主義により国籍を得た子(うちの子供達はこれに該当)には国籍選択の義務は課せられていません(更に、外国人の両親から生まれた子供達についても、最低8年以上ドイツで生活していた場合などは、将来二つの国籍のどちらかを選択する必要はないという法案が、今年3月に閣内で基本合意)。要するにうちの子供達の場合、大人になったらドイツでは二重国籍を認められるけれども、日本では認められない、という事です。もっとも実質的に両方の国籍を保持し続けている人も多いようですが、生まれ持った国籍を保持しているだけなのに、法律に反しているという後ろめたい気持ちを持たなければいけないのは悲しい。両親の母国として慣れ親しんできた二国のうちどちらか一方を「母国」として選び、もう一方を「外国」として切り捨てるなんて、本人はもちろん、親にとっても非常に酷。孫や曾孫やその先までも永遠にとまでは言わなくても、せめて自分のお腹を痛めて産んだ子供くらいは、どこに住んでいても日本人であり続けて欲しい。だから日本の法律でも出生による二重国籍を容認して欲しい、と切実に思います。ドイツでは容認されている事が、なぜ日本では容認されないのか。ドイツが外国と地続きで、多重国籍者や移民の数が日本よりずっと多いという事実が、背景にはあるのは間違いないでしょう。あえて意地悪な言い方をすれば、日本は国際化とか何とか言っても、まだまだ島国根性が通用するお国なのかもしれません。近隣諸国と緊張関係にある日本の現状を考えると、どういう形であれ国籍法を緩めるのは難しいような気もしてしまいますが、さりとて自分の子供の国籍を剥奪されて感情的に納得できる訳でもありません。

長崎で生まれ、5歳で渡英した日系イギリス人作家のカズオ・イシグロ氏が、インタビュー
で次のように語っています。
***以下 http://www.kaz-ohno.com/special/kazuoishiguro.html より引用***
- イシグロさん自身のことについて、おききしたいと思いますが、国籍は日本と二重国籍を持っておられるのでしょうか。
イシグロ 残念ながら、日本は二重国籍を許しません。イギリスは許しますが、もし日本のパスポートを持とうとすれば、だめですね。少なくとも私がイギリス 国民になったときは、100パーセント日本人になるか、日本のパスポートを捨てるかどちらかでした。今でもそうだと思います。人生のある時点で決意しなければなりませんでした。最終的には感情的には日本ですが、すべての実用的な理由から、私はイギリス国籍を選びました。もしアフリカで困ったことになれば、 日本大使館ではなく、英国大使館に行かねばなりません。日本大使館に行っても、理解してもらえませんが(笑)。
***以上引用***

最初にこのインタビューを読んだ時は、失礼ながら、「5歳でイギリスに移住して35歳まで日本に戻らず、日本語は5歳児レベルで英語は小説家レベルという人でも、『感情的には日本』なんだ!」と驚きました。どうもナショナル・アイデンティティというのは、理屈では測れない厄介な代物らしい。イシグロ氏は更に「私が作家になったのは、私が日本からの「亡命者」であることに大いにかかわっています。」とも語っています。つまり彼は5歳からずっと「自分は外国人」という意識で生きてきた訳で、それが人格に及ぼす影響は、日本人として日本に生まれ日本人と日本文化に埋もれて育った私などには想像もつきません。

長男はたまに、「ボクはドイツで生まれたからドイツ人だと思う。」などと言います。幼いなりに、自分が純血ゲルマン人ではない事を認識し、自分のアイデンティティを定義しようとしているのかもしれません。だからと言って別に日本語をしゃべるのを嫌がったりする訳では(今のところ)なく、私と話しているのを学校の友達に聞かれて「ボクのママはドイツ語ができないから、ボクが日本語でしゃべらないといけないんだ。まぁママも聞くのはそれなりに出来るんだけど、しゃべるのはダメなんだよね。」などと説明していたりもします(苦笑)。「日本は地震が怖いけど、ご飯が美味しくて遊ぶ所がたくさんあるからまた行きたい」とも言い、おにぎりやカレーや焼き蕎麦やラーメンが大好き。2つの文化を当たり前のように吸収しながら育っている私の子供達から、私の母国の国籍を取り上げないで欲しいのです。

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<参考サイト>
法務省 国籍選択について
国際結婚を考える会 国籍法の知識を増やそう-日独二重国籍の場合
ドイツ、二重国籍の要件緩和へ=年内に法制化
日本とドイツの二重国籍が可能に?!
国籍選択届けについてのサジェスチョン
ハーフを考えよう! 法律について(国籍)
宇多田ヒカルもフジモリ大統領も 「二重国籍」容認が国を変える
重国籍と国籍唯一の原則~欧州の対応と我が国の状況~
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by penguinophile | 2014-05-31 02:56 | 結婚滞在諸手続 | Trackback | Comments(2)
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Commented by ろろろ at 2014-06-02 06:18 x
こんにちは。

国籍の選択、難しいですね。
ドイツニュースダイジェストで連載をもっていらっしゃる山片さんという方が二重国籍について参考になる記事を書いてくださっています。
日本とドイツの二重国籍が可能に?!で検索すると出てきます。
Commented by penguinophile at 2014-06-05 23:33
ろろろさま:
コメントどうもありがとうございました。
記事の紹介もどうもありがとうございます。やはり実質的には可能なようですね。個人的には名実共に堂々と可能になって欲しいものですが。
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ドイツ田舎町での地味暮らしを徒然なるままに。


by penguinophile
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