学校と宗教
息子たちが通う小学校(Grundschule:1~4年生)は、市立ながらカトリックの学校(katholische Bekanntnisschule)ですが、保護者による投票の結果、来年度からは宗教的に中立なコミュニティ学校(Gemeinschaftsschule)に変わる事になりました。



…と、さらっと書いてみましたが、日本的に考えるとかなりヘンな話でした、これ。そもそも税金で賄われる公立の学校がカトリックという時点で違和感ありまくり。これには歴史的経緯があり、昔のドイツでは小学校と言えばほぼ「公立カトリック学校」か「公立プロテスタント学校」だったらしい。まぁ市民のほとんどがカトリックかプロテスタントだった時代はそれで良かったのでしょうが、第二次世界大戦後はこのような学校は段々と減っていき、現在ではNiedersachsen州の一部とNordrhein-Westfalen州に残るのみ。私が住んでいる町はとてもカトリック色が強い保守的な土地で、市内の全21校のうち、カトリック12、プロテスタント1、中立8。今回はカトリック12校のうち、3年生児童の半分以上がカトリックではない4校において、「中立校に変更すべきか」を保護者に問う投票が行われました。そのきっかけになったのが、3年前のこの出来事↓

<以下、過去記事より引用。>
カトリック教会が運営する小学校でも、運営資金は税金でまかなわれており、プロテスタントやイスラムや無宗教の児童も受け入れています。学校のカリキュラムには宗教教育がありますが、例えばイスラム教の授業は普通ありません。事件があった学校に通うある女子児童はイスラム教で、宗教の授業には出席していませんでした。そして彼女の弟が今年同じ小学校を志望したところ、宗教の授業に出席しない事を理由に入学を拒否されたのです。親は裁判所に訴えましたが、学校の判断は州の法律に背く物ではないとして敗訴。それでも納得できなかった親が息子を連れて入学式に行き、警察に自宅まで連行される騒ぎとなりました。結局その男の子は他の小学校に通う事で落ち着いたようですが、同い年の息子がこれからカトリックの小学校に通う異教徒ガイジンの私にとっては、何やら後味の悪い事件でした。
<引用ここまで>

この事件(?)を知った時、私は「宗教の自由が保障されている先進国で、市民の税金で運営されている学校が、児童の信仰を理由に入学を拒否するなどという暴挙がまかり通るのか!?」と驚愕したものです。

カトリックの学校(katholische Bekanntnisschule:以下kB)と中立の学校(Gemeinschaftsschule:以下G)で具体的に何が違うかと言うと、例えば…
・入学許可
 kB:カトリック児童が優先。空きがあれば他宗教の児童も受け入れる。
 G:宗教にかかわらず公平に受け入れる。
・教育方針
 kB:カトリックの教義による。
 G:キリスト教および多文化価値に開かれた教育。
・教員
 kB:カトリックの教員のみ採用。
 G:教員は宗教にかかわらず採用。
・資金
 kB:運営資金は市の公的予算(カトリック教会からの資金提供はなし)。
 G:運営資金は市の公的予算。
・宗教教育
 kB:児童は自分の信仰にかかわらずカトリックの授業を受ける義務がある。
 G:カトリック、プロテスタント、その他の宗教の授業、あるいは一般倫理の授業を選択できる。
・礼拝
 kB:カトリックの教会のみを訪れ、礼拝に参加。
 G:種々の教会を訪れ、礼拝に参加。

例えて言えば、東京都○○区立第一小学校が、「本校は浄土宗の児童を優先して受け入れ、他宗派の児童は入学をお断りする場合があります。教職員には浄土宗の信者のみを採用します。」と言っているようなものです。いやはやものすごい違和感。修道院附属学校とかじゃなく、公立の学校の話ですからね。

ドイツがキリスト教国なのは紛れもない事実と言って良いでしょう。与党の名前からして「ドイツキリスト教民主同盟」だし、祝祭日もキリスト教にかかわる物が多い。私はお邪魔しているガイジンの身でそれに文句を言うつもりはありませんし、そもそも別にキリスト教が嫌いという訳ではなく、むしろ「もしも町から教会が全部なくなっちゃってクリスマスも復活祭もなくなっちゃったら寂しいよナー」と思うほど。それにドイツにおいて、キリスト教系の団体やボランティアが、病院や老人ホームの運営から外国人統合や古着リサイクルや難民対策といった草の根的な活動まで広く携わる事によって社会的弱者の救済に寄与している事は、日々の暮らしの中で実感しています。でも、公立の学校が信仰を理由に納税者の子供の入学を拒否するのは、ちょっと行き過ぎというか、話が違うと思います。それに一人の親として、無能なカトリックの教師より有能なプロテスタントの教師に教壇に立ってもらいたい。

…と思っていたので、息子たちの小学校が中立校になると決まって正直ホッとしました。ただし同様の投票が行われた他の3校では、現状維持という結果になりました。ちなみに3年前にイスラム教徒の子息の入学を拒否した学校もこの3校に入っています。棄権は現状維持に賛成とみなされ、積極的に「変更に賛成」と投票した保護者が過半数を越えれば変更になるという形式でしたから、もともと変更になる方が難しい投票ではありました(ドイツ語がわからず棄権してしまう外国人はだいたいカトリックではなさそうなのがちょっと皮肉)。うちの小学校はドイツに引っ越して間もない子供達を受け入れる国際クラスが地域で唯一ある(ただし昨今の難民増加を受けて今後増える見込み)学校という事もあり、もともと比較的カトリック色が薄い学校だったのも関係しているでしょうし、PTAが投票率を上げるべく努力した成果でもあったのでしょう。

日本に住んでいると、自分の信仰を意識する機会も必要もほとんどありませんが、ドイツでは住民登録に当たって宗教を登録し、キリスト教徒は教会税が給料天引きの国で、生活・社会・文化の中に宗教の占める割合が大きい感じ。ドイツ暮らしも長くなりつつありますが、私にとってはやっぱりいつまでたってもいまいちよくわからん外国かも。
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by penguinophile | 2016-03-26 04:24 | 徒然 | Trackback | Comments(0)
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ドイツ田舎町での地味暮らしを徒然なるままに。
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