入学式の日(後編)

8/31(木)、娘の小学校入学式。すぐ隣の幼稚園から仲良し女子グループ5人がまとめて同じクラスに入れたし、担任も去年度までお兄ちゃんがお世話になった先生でアタシの希望通りだし、お兄ちゃん達の送迎や入学前プログラムで建物だってもう知っている。緊張というよりワクワクばかり!で迎えた入学式でした。末っ子がもう小学生かぁ(しみじみ)。
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この日の私は、2時間おきにバラバラの場所へ3人を交代に送迎し、その合間に入学式に出席して幼稚園に挨拶に行き昼食を作って子供に食べさせる、とかなり忙しい予定だった。ちなみに車は長期間使わなかったせいでバッテリーが上がり動かない(まぁ車が動いてもほぼペーパードライバーなんだけど)。町はずれのショッピングセンターで、新入生がお店を回るといろいろオマケがもらえるイベントがあり、娘を連れて行きたかったが、とてもそこまで手が回らない。気合を入れて一日をスタートしようとした矢先に雨が降り出した。ワンピースを着た新入生と雨の中を自転車で一日走り回るのか・・・しかも紙製の大きなSchultüteまであるよ・・・(>_<)

そこで、困った時にいつも頼りになるお隣のS夫人に「お兄ちゃん達を学校に送る間、娘を預かってくれないか」と頼むと、快く引き受けてくれたばかりか、入学式の送迎とショッピングセンターのイベント付き添いまで申し出てくれたので、渡りに船とばかりに甘える事にする。入学式の内容については過去記事参照(リンク)。去年から宗教色がなくなったはずの学校だが、礼拝の習慣は変わらない。そして前日が半年振りの登校だった次男が、既にちゃっかり学校のコーラス隊として当たり前のような顔で歌っているのに驚く。それにしても、親も子供も先生も、スーツ姿は一人たりともいない。母親が卒園式や入学式で着るためのスーツが女性ファッション誌で取り上げられるどこかのお国とは大違いだ。入学式を終えてから、娘と幼稚園へ挨拶に行ってしばし談笑してから、迎えに来てくれたS夫人に娘を託す。

そんな訳で、その日のS夫人は「代理孫」を預かって右往左往させられていた。ショッピングセンターではたくさんのお店を回ったし、駐車場で車をこすられて警察が来るまで1時間も待たされたし、全て終わったのはもう夕方。代理孫を無事に隣宅に送り届け、やっと自宅に戻ったところで、ふと異変に気付く。終日在宅予定の夫S氏(80歳)のために準備した昼食がそのまま残っていたのだ。寝室に様子を見に行ったところ、S氏はまだベッドの中にいたのだが、何やら様子がおかしい、というか全く動かない。とにかくかかりつけの家庭医に電話するも、2週間の休暇中(さすがドイツ)。代診の先生に往診を頼むが、待合室が満員で手が離せず、救急車を呼ぶように言われる。救急隊員に続いて救急医もやってきて、S氏の死亡が確認された。しかし死因がはっきりしない。S氏は何年か前から高血圧の薬を飲んでいたが、他にこれといった持病もなかった。「死因不明→不審死の疑い」となり、警察が呼ばれる。警察はS宅を隅々まで調べあげ、S夫人に質問する。
-いったいどうして夕方まで夫の死亡に気付かなかったのか?
-S氏が昼頃まで寝ている事はよくあるし、今日は隣の子供を連れて外出していた。
S夫人の当日の行動を確認するために、第三者の証言が必要だと判断された。

そこでS夫人が行動を共にしていた娘の自宅、つまりウチのチャイムが鳴らされた。インターホンを取ったらいきなり「Kriminalpolizei」ですよ。私服刑事が身分証明として見せたのは、金属製の大きなキーホルダーみたいな物だった。たぶんコレ(リンク)。刑事さんは感じのいい若い男性で、開口一番「今日入学したのは誰?キミか!おめでとう!」と娘と握手。子供抜きで話したいと言われ、子供とぬいぐるみ軍団をまとめて寝室に放り込む。学用品の名前書きの真っ最中で散らかった部屋に人を通すのは恥ずかしかったが、犯罪捜査課の刑事ならもっとすさまじい現場を見た経験があるだろう。そして刑事さんの口から、隣宅のS氏が亡くなった事を聞かされ、今日のS夫人との接触、最後にS氏を見たのはいつか、などと尋ねられた。なにせその日はS夫人に娘を三回も預け、私自身も2時間おきの約束に追われていたから、一連の行動とその時間についてはかなり正確に話せたつもり。こういう時、ドイツ語も英語も全く出来なかったらどうなるのだろう?とふと思った。S氏の遺体は翌日、検死解剖されたらしい。死因が判明したのかは聞かなかったが、遺体はすぐに遺族に返されたから、事件性はないと判断されたのだろう。

S夫人はこの日の事を一生忘れないと思う。私はこれまで、「自宅で就寝中にぽっくり」を理想的な死に方だと思っていた。しかし、家族の立場に立ってみると、何の前触れもなく身内の死体を発見したショックも覚めやらぬうちに、自宅が殺人現場のように扱われ、自分が殺人犯のように扱われる事になる。S夫人は「Sehr unangenehm(非常に不愉快)」と表現していたが、これは確かにかなり厳しい経験で、警察に対して「80歳の普通の老人が自宅の寝床でひっそり息を引き取ったのだから、そっとしておいて欲しい」という気持ちになっても無理はない。とはいえそんな死が不審死としてきっちり調査されるのは、ドイツが豊かで平和な国だという一つの証なのかもしれない。

という訳で次回はお葬式の話。


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Commented by ちえ at 2017-09-16 00:21 x
待ったよ...。
しかしS夫人、単なる御愁傷様だけでは収まらない、大変な思いをされましたね。だから何と言ったら良いかわからないんだけど。

KriminalpolizeiのKriminalって英語のCriminalかと思って、ドイツって犯罪と他とに警察が分かれてるの?と思ったら、一緒で私服警官って意味なんだね。ほら、確か英語のCopyはドイツ語でKopyだからすっかりそれと同じかと思ってしまったよ。

お葬式編、首を長くしてお待ちしております。
Commented by ちゃこ at 2017-09-24 12:02 x
心優しいS夫人、お悔やみ申し上げます。
しかし、すごい経験だ…ね。
捜査に来た警察官が、子供にお祝いの辞を述べる!?って、日本ではまず無いことだろうね~(笑)
Commented by penguinophile at 2017-10-03 23:53
ちえさま:
私も単純にCriminal policeと頭の中で変換してたんだけど。あとVerkehrspolizei(交通警察)なんて単語を聞いたことがあって、警察の部署の違いだと思ってたんだけど。両方とも警察だけど、犯罪課、交通課、みたいな。
Commented by penguinophile at 2017-10-03 23:57
ちゃこさま:
うーん、日本で犯罪捜査に協力した事がないからよくわからないけど、日本にも結構そういうフレンドリーなおまわりさんもいるかもよ?いないかな。基本的にドラマのイメージだけなのでわからん。まぁいくら本人が好青年でも、業務上は係わらずに済む人生を送りたいものです。
by penguinophile | 2017-09-15 22:28 | 子供 | Trackback | Comments(4)