“Lord Peter”, “Unnatural Death”, “Thrones, Dominations” / Dorothy L. Sayers
東風さんnyf1403さんのブログでミステリーの記事を読んだら、書きかけで放り出してあった記事があったのを思い出したので、今更アップします。

英国の女性推理作家ドロシー・L・セイヤーズの短編集“Lord Peter: The Complete Lord Peter Wimsey Stories”(邦訳「ピーター卿の事件簿」)、長編“Unnatural Death(邦訳「不自然な死」)” 、“Thrones, Dominations(書きかけの原稿をWalshが仕上げた作品)”読了。

ドロシー・L・セイヤーズという作家は、英国黄金期のミステリーの女王とか言われていますが、日本での知名度はアガサ・クリスティやコナン・ドイルに比べてかなり落ちるような気がします。彼女の作品としては、このピーター卿を主人公にしたシリーズが最も有名です。近年、創元推理文庫から新たに訳本が出たようなので、これで少しは知られるようになるでしょうか。推理小説ばかりでなく、ダンテの「神曲」の翻訳も手がけている才媛で、オックスフォード大学の学位を授与された最初の女性の一人です。才媛過ぎて、小説の鍵となる部分にフランス語やラテン語が当たり前に出てきたりするので、へっぽこ読者のワタクシはたまに落ちこぼれる始末(^^;。

シリーズの主人公のピーター卿は、公爵家の次男坊であり、依頼人からお金を受け取るプロの探偵ではありません。探偵業はいわば趣味というか、妻に言わせれば“noblesse oblige”(高い身分に伴う義務/ジーニアス英和大辞典)。ピーター卿も、忠実な使用人のBunter等の脇役も、いい味を出しています。シリーズを通して登場人物が人間的に成長・変化していく楽しみもありますし、謎解きの面白さという点でも個人的にはクリスティより好みです。英語はクリスティより少し難しいかもしれませんが、格調高いような気がします(・・・って実はよくわかってないんだけど、たぶんなんとなく)。

このシリーズ、英国正統派推理小説がお好きな方にはお勧めです。私もまだ全作を制覇した訳ではないのですが、セイヤーズが既に亡くなっており新作が出る事がないので、全部読んでしまうのは寂しいような気もしています。しかしなにせ記憶力が弱いので、読み直しても新鮮な気持ちで楽しめるかも?



20台半ばまでの私にとって、英語の文章はほとんど勉強で接するものでしかありませんでした。ふとした機会に、子供の頃に翻訳で読み好きだったイギリスの児童書を英語で読み直してみたところ、「な~んだ、けっこう読めるじゃん!」と嬉しい発見をしました。「英語の勉強」という大義名分のもと、すっかり楽しんであれこれ読み直しているうちに、いつしか慣れて、よほど小難しい内容でない限り、大人向けの物や長編でも普通に読めるようになりました。10年間で200冊ほど読んだかと思います。

あくまでもお勉強ではなく楽しみなので、単語はほとんど調べません。なにせボキャブラリーが貧困なもので、翻訳で読んだ方が内容的にはよく理解できる場合もあると思います(ただしまともな翻訳者が訳した場合)。ペーパーバックになるのを待っているうちに、翻訳本がもっと安く出版され、なんだかバカバカしい思いをした事も多々ありました。でも、例えば一人称をどう訳すかによってその人物の印象が全く変わってしまう事もあり、作者の書いた文章を翻訳者の解釈を介さずに直接受け止められるのが、原書読みの大きな利点だと感じています。

ドイツ語でもいろいろ読めるようになりたいと思うものの、現実には辞書ひきまくりの「お勉強」状態になってしまうのがつらいところです。まぁ、息子と一緒に絵本からスタートして、ぼちぼち進歩していければいいかな~(あっという間に抜かされそうだが・・・)。
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by penguinophile | 2007-08-30 02:36 | 徒然 | Trackback | Comments(15)
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Commented by eastwind-335 at 2007-08-30 16:28
ここにいらっしゃる方の多くが「私も!」とおっしゃると思うのですが、旅行に行くとその国の本屋さんを必ず覗くんです。で、買ってしまう。この3月のドイツ旅行でも実は、ドイツ人が書いた高校生ぐらいが読む小説を教えてください!と言って買ったぐらい。でも、もっと子ども向けからじゃないとダメですね。
いつか私もこんな原著を読みましたーってブログで報告できるように、penguinophileさんを見習ってがんばります。まず、手元に積んであるものから、ですが。
Commented by まき at 2007-08-30 18:21 x
すごっ!私、全然完読できないよ。途中で飽きちゃうし、どこまで読んだかわかんなくなっちゃって、同じ所読み返してるうちにイヤになっちゃう。日本語なら、通勤電車の往復で読めちゃうのにね。辞書引かずに進んでいけるってことは、やっぱセンスがいいんだよ。昔から英語できるもんなぁ。

ところで、こないだTV番組でこう紹介してた。あるドイツ女性コメンテーターが村上春樹の本を酷評し、その揉め事が原因で番組を降りたけど、それがきっかけで村上春樹の本がバカ売れしたって。そんなに売れてるなら、こっちの原版読んでみたい人いるんじゃないの?
Commented by nyf1403 at 2007-08-31 23:31 x
ピーター卿シリーズは、日本語で読破してありますが、最後のは古い翻訳でしかよんでいません。ずっと、新約を待っているんですが、はたして出るのかなー。何冊かはドイツ語でまず、読んだあと、日本のを買いました。
推理ものとダーシー物は読めるんですよね、わからんところはすっ飛ばすんですが。

↑まきさん、横からこんにちは。
「国境の・・・」がその本です。4人で新刊を紹介、批評する番組があって、その中でのことでした。話題にはなりました。この番組はわりと権威がありましたから。でも、村上春樹の本は、最初の頃は英語版からの翻訳とか、誤訳とかあったそうですし、タイトルは、はっきりいって、とほほの翻訳です。ノルウェーの森が直子の微笑みですから。
Commented by penguinophile at 2007-09-01 01:59
東風さま:
私も旅先で本屋を見かけるとふらふら~っと入ってしまうタイプですね。いっぱいの本に囲まれるとなんとなくホッとするのは、「本の虫」である証かな?
私の英語もまだまだヘッポコなんですが、今はそれよりまずドイツ語。東風さんの脳内なんちゃって翻訳機を目指して頑張ります~
Commented by penguinophile at 2007-09-01 02:04
まきさま:
辞書ひかずに進めるかどうかって、センスというより性格という気もします。まぁドイツ語では出来ないという事は、最低限の単語力はやっぱり必要なんでしょうけど。

村上春樹は結構人気あるみたいですね。そういえば義父も読んだとか言ってたような。酷評したために降板になった上に本がバカ売れじゃ、泣きっ面に蜂状態?
Commented by penguinophile at 2007-09-01 02:10
nyf1403さま:
おぉ、既に制覇されてましたか。さすが!最後のって"Thrones, Dominations"でしょうか?出るかわからない新訳を待つならやっぱり原著で読むべきでしょう!?推理物って一般に、先が気になるし話の筋が論理的だから、慣れない言語でも読みやすい気がします。ダーシー物は、愛は強しというか、好きこそものの上手なれというか・・・

それにしても「直子の微笑」って(笑)
Commented by nyf1403 at 2007-09-01 03:51
最後のは、直訳すると「忙しい蜜月旅行」です。これは絶対新翻訳で読みたいのですが、翻訳者、なくなってしまったんですよね。ジル・チャーチルも彼女でした。
この最後のは、たしか、ドイツ語で読んでそのあと、ハヤカワポケミスで出ているのを発見し、読んだんです。ここは、英語に挑戦でしょうか。ダーシーへの愛情にはほど遠いけど、ピーターさんも嫌いじゃないし。
Commented by penguinophile at 2007-09-01 05:41
nyf1403さま:
あ、私それまだ読んでないです。なんとなくハリエットが出てこない作品の方が好きで。でも「ピーター卿の事件簿」を読んだらその偏見(?)も消えたようなので、読んでみようかな。
新版の翻訳者の方、亡くなってしまったんですか。それは残念でしたね。東風さんも翻訳者で本を選ぶ事があるようですが、翻訳者のセンスと合うかどうかはとても重要ですものね(センス以前のトホホ翻訳は論外として)。
ここはやっぱり英語版に挑戦でしょう!「(多少の)愛情&推理物&昔読んだことがある」なら、きっと大丈夫ですよ。
Commented by まき at 2007-09-01 09:40 x
nyf1403さん、そうです。「国境の・・・」でした。
村上春樹は「ノルウェー…」英語版は自身で書いてましたっけ?少なくとも目を通していますよね。それがドイツ語だと、「直子の微笑み」ですか。へえー。いいのかなぁ?直子に微笑まれるのは嫌いじゃありませんが、ドイツではビートルズ聞かないのかな?皆様のどなたかが「日⇒独」に直訳してくれる日を夢見ております。
Commented by nyf1403 at 2007-09-01 15:45
まきさん、こんにちは。
「国境の・・」が「危険な愛人」という題ですよ!でも、それ以降はましになって、ダンス・・は「羊男とのダンス」とか、きちんとなっています。出版社が替わったのがよかったのかな。今は日本語→ドイツ語翻訳になっていますから、まともな訳・・なんだと思います。でも、前に吉本ばななの「キッチン」でも正反対の誤訳をみていますしねー。
ノルウェーの森、これは翻訳はきちんとしているようですが、このタイトルの重要性を把握できんかった、おばか、と猪之助(夫)にいったら、日本人作者だからそれを強調するにはナオコとつける方がベターと思ったんでないの、って。その感覚からしておばかー、と思っちゃうんですけどね。

母ペンさん、昨日、ベッドの中でダーシー三部作の最後をまた、読み始めちゃいましたよ。月曜日、もしかして、大画面のあの方に会うかも・・・。
Commented by penguinophile at 2007-09-02 02:06
まきさま、nyf1403さま:
日本公開時の洋画タイトルもたまにのけぞるのがありますが、それにしても「危険な愛人」は・・・すごいな(--;。日本人作者を強調するためってのも「著者名で十分じゃん」と思ってしまいました。
大画面、観にいらしたら結果をブログでご報告くださいね。でもドイツ語しゃべってるんですよねぇ。うーむ。
Commented by chibininn at 2007-09-02 03:30
みなさん、すごいですねー。私は小説は絶対日本語で読みたいです。確かに翻訳物は当たり外れが大きいけど・・・。原語で読める(というか我慢できる)のは専門書とエッセイまで、小説は日本語じゃないとイヤだー。心底楽しめないです。私の友人には、翻訳物も読みたくないという女もいます。横文字の名前が覚えられずに、登場人物の人間関係が把握できないんだそう。私の周囲ってレベル低すぎ?
Commented by penguinophile at 2007-09-02 22:40
ちびにんさま:
すごいというか、単なる好みあるいは性格の問題のような気もします。
私は横文字でも縦文字でも人の名前を覚えるのがものすごく苦手で、小説の登場人物もあんまり多いとごちゃごちゃになってきちゃいます。日本の小説にたまに付いている「登場人物一覧」、重宝してました。でもあれって翻訳者が付けるものなのかな?
Commented by ちえ at 2007-09-03 06:29 x
なすちゃんが日本に居る時からずっとそうじゃないかと思ってたんだけど、絶対に日本に居たなすちゃんの方が英語の原書をたくさん読んでいて、アメリカに居る私の方が日本語の本(漫画を含む)を読んでるよね。一日仕事で英語でいて、うちでの楽しみぐらいは日本語でって思うじゃん。しかし、なんて経済効率が悪いんだ。でも英米は日本に比べてずっと本代が高いから、ペーパバックでも原著の方が紀伊国屋に入っている文庫の翻訳本より高いなんて事は多々あるんだけど。まあ、翻訳本はもともとが難しすぎない限りは(例、トーマス・マン)ローマン語で書かれたものは英語で読むようにしようと思って、で結局英語読むのが面倒臭くって結果として読まないという事の方が多いんだけど。
Commented by penguinophile at 2007-09-04 19:03
ちえさま:
私の場合は逆に、仕事で英語を日常的に使っていた訳じゃなかったから、うちでの楽しみは英語でもいいかな、みたいな感じだったかも。
私が日本で洋書を読み始めた頃は本当に高くて悲しかったけど、ネットで買えるようになったらずいぶんお求めやすくなって嬉しかったですわ。それでも文庫の翻訳本と比べるとやっぱり高かったけど。

ドイツ田舎町での地味暮らしを徒然なるままに。
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