ブルージュ(Brugge)・異教徒の教会訪問編
なんと半年以上も前の未投稿記事を発見してしまいました。今更の感はありますが、お蔵入りにするのももったいない長さなので、アップしておきます。

イースター休暇にベルギーで教会をいくつか訪ねました。教会を訪ねる際は、自分一人より夫と一緒の方が、断然面白いです。夫はもはや教会のメンバーではない(教会税を支払っていない)不信心者ではありますが、キリスト教文化圏で育ち、学校でカソリックの宗教教育を受けたため、異教徒ガイジンの私にはさっぱりわからないキリスト教世界の常識を知っているからです(そして薀蓄を語るのが結構好きな性格。ちなみに私は記憶力が悪く同じ事を何度でも新鮮に聞けてしまうおバカ。破鍋に綴蓋夫婦?)。

例えば、「父と子と聖霊の御名において、アーメン」という決まり文句はなんとなく聞いたことがあっても、宗教画でキリストの上の方に羽ばたく鳩が三位一体の一端を担うその「聖霊」を表現しているとは、夫に教えてもらうまで知りませんでした。また、教会内にズラーッと並んでいる聖人像も、「鍵/逆十字を持っているから聖ペトロ」などとわかるようになると、それだけでもちょっと気分が違います。ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」ではありませんが、一見すると単なる絵や彫刻なのに、実はシンボルがすごくたくさん潜んでいるのが、少しでもわかると興味深く感じるものです。丁寧に見ていると時間がいくらあっても足りないのが難ではあります。
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ブルージュでは、聖血礼拝堂(H.Bloed-Basiliek・写真左)に納められている「聖血の遺物」と、ノートルダム教会 (O.-L.-Vrouwekerk・写真右)にあるミケランジェロの「聖母子像」を見ました。

「聖血の遺物」とは、要するに「キリストの流した血を吸った布」(!)で、十字軍に参加したフランドル伯が持ち帰ったものだそうです。ガラスケースに納められたその布は、黒ずんでいるかと思いきや、意外にも赤かったので、何やら生々しくて一瞬ギョッとしてしまいました。

聖血の遺物のご開帳は、一人ずつその前に進み出て参拝するという形式でした(←キリスト教でも開帳とか参拝とかいう表現を使うのか?)。こういう場合、異教徒ガイジンとしてはどういう態度を取ったらいいものやら、少々悩みます。特にたまたまその日はキリストが磔にされた聖金曜日という特別な日でしたので、真面目な信者さん達の手前、粗相があっては申し訳ない、みたいな妙な気遣いも(^^;。ガラスケースに口づけをしている人が多かったのですが、異教徒がそこまでやるのはかえってヘンであろう、夫は(不信心者のくせに珍しく)跪いていましたが、私はそれにもちょっと抵抗がある・・・などとアレコレ悩んだ結果、胸に手を当てて頭を垂れ黙祷など捧げてみましたが、あれで良かったのやら未だに不明。まぁ目の前で番をしながらキスの跡を拭いていた聖職者の方に怒られませんでしたから、おそらく失礼には当たらなかったのでしょう。そんなに悩む位なら最初から近付かなければ良さそうなものですが、失礼ながらやはり興味がありましたので。

ミケランジェロの「聖母子像」は、聖母マリアと赤子イエスの彫刻です。でもなぜか私には、聖母マリアの姿がとても悲しく寂しげに見えてしまいました。たまたま聖血の遺物を見た翌日だったせいかもしれませんし、ミケランジェロつながりでバチカンのサン・ピエトロ寺院で見た「ピエタ」を思い出したせいかもしれません。イエスの生涯は、もちろん宗教的に見れば輝かしく素晴らしいものだったのでしょうが、一人の母親として見ればむしろ痛ましいものでもあったのでは・・・などと超余計なお世話な事まで考えてしまいました。

多くの国において、宗教が人々の生活と切っても切れない関係にある以上、旅行先で宗教関連施設を避けて通ったら、観光名所が半減してしまいます。結局のところ、一般観光客に公開されている宗教施設であれば、「帽子を取る。肌を露出しない。大声でしゃべらない。無闇に写真を撮らない。入っていい場所といけない場所に注意する。」といった基本的な礼儀をわきまえ、あとはその宗教への敬意と「すみませんが、ちょっとお邪魔いたします」的な精神態度を忘れなければ、野次馬根性で覗いても許されるのかな(許してね)、などと思ってみたりします。

・・・と書くとなにやら殊勝そうですが、実は今回の旅行で、ちょうどイースター礼拝の直後にある教会に入ったら、信者さん達の親睦会(?)をやっていて、ちゃっかりイースターエッグチョコ、ワイン、ジュースなど頂きつつ、「素敵な教会ですね~」「○○教会はもう行きましたか?あそこもとても綺麗だから、是非行ってみるといいですよ。」なんてほのぼの雑談しちゃったりもしました。
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by penguinophile | 2007-10-27 03:56 | お出かけ | Trackback | Comments(10)
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Commented by eastwind-335 at 2007-10-28 12:47
いま、私の父がとある大学が主催する社会人講座で美術史を勉強中です。父もキリスト教主義の学校を出て、私以上にいろんなことを知っているのですが、聖書を読まないと西洋美術はわからない、と大きな字の聖書を頼んだそうです。知り合いの喜寿近いおば様は、大学のゼミに学生に混ざって参加されていて、「文学もわかってないといけないし大変ですけれど、楽しいわ」とおっしゃってました。
日本の美術も仏教や中国の故事がわかると、また面白さが増すし。なんでも関心をもっておくのが、自分を豊かにしてくれる一歩なんだなと思うこの頃です。
Commented by nyf1403 at 2007-10-28 17:27 x
知らなくてもよいけれど、キリスト教の知識があるとより深くわかる、ということは確かですよね。私はドイツに来るまでクリスチャンにもかかわらず、知識はゼロに近かったです。
ギムナジウムでの美術の授業、高学年になると画の分析とか美術史をやりまして、キリスト教文化は欠かせないポイントです。でも、イスラム教徒である生徒も大勢というのがドイツですから、いろいろな配慮は必要らしいですよ。一緒に教会見学にいっても、教会に入らないというイスラム教徒である生徒の意志は尊重したりとかね。
Commented by ちえ at 2007-10-29 09:18 x
Forensic Science に興味があって、昨日も朝三時までつい Court TV で forensic science もの(日本語でなんて言うの?)を見ていた私としては、是非その聖遺物の DNA 鑑定とかをしていただきたい。でもいくらなんでも二千年も経ってたら鑑定できないかな?
Commented by penguinophile at 2007-10-30 02:54
東風さま:
お父様、勉強熱心ですね~(^^)
>聖書を読まないと西洋美術はわからない
確かに。キリスト教が、美術に限らず、文化全体の根っ子に浸透してるように感じる事があります。

「過去にあった事なんて自分には関係なーい。まして外国なんて、一生に一度行くかも怪しいもんなのに。」とか思い、歴史はやる気ゼロだった愚かな私。あの頃の授業をいま受けたら、もっと面白いと感じられる事でしょう。
Commented by penguinophile at 2007-10-30 02:57
nyf1403さま:
確かにこちらの美術史はキリスト教文化と切っても切れない関係でしょうね。そうか、でもイスラムの生徒も多いんですもんね。教会に入るのもまずいのか・・・。
Commented by penguinophile at 2007-10-30 03:02
ちえさま:
科学捜査(かな?)がもしできたら、「キリストの遺物」だけでいったい何人分のDNAが出てくるやら・・・そういえば仏舎利も同じだよねー、と思ったら、Wikipediaにこんな↓記述がありました・・・18トンっていったい(笑)

(http://ja.wikipedia.org/wiki/仏舎利)
一説には、現在アジア全土に「自称」仏舎利の合計は2トンにも達するという。
これが全て本物であるならば釈迦の体重は18トン位(インド象5頭分に相当)であったことになる。

Commented by まき at 2007-10-31 05:10 x
先日、ハトシェプストのミイラも鑑定できたし、数年前はトリノの聖骸布も古い物だって証明されてたし、科学鑑定できるんじゃないかな。確かに、仏舎利はそうね。仏教徒はみんな、実は骨が収まってないこと知ってるもんね(笑)

>薀蓄を語るのが結構好きな性格。

そうそう街のガイドも買って出てくれて。楽しかったわ。言われて思い出したけど、私は文系だから、大学入って旅行するようになって、すぐに美術史とオペラをとったっけ。シンボルやアレゴリーは習ったよ。ベルギーも面白いけど、チェコにもローカルな聖人がいっぱいいて面白かった。そういえば、ブルージュ報告が遅れたのは私のせいだな:)
Commented by akberlin at 2007-10-31 17:16
ブルージュのとローマのサンピエトロのピエタはともにミケランジェロの
作で、ブルージュのは若い頃の、ローマのは円熟期か晩年の作、と聞いた
ような・・・。ブルージュのは見たから次はローマだわ、と思って幾年月・・・。
ブルージュに行ったのがもう16年前(!)になっちゃっいました。
とても美しい街だったのが印象的。がっつりムール貝とフライドポテトを
食べた覚えがありますが。(ベルギーワッフルなんてかわいいものじゃなく。)
Commented by penguinophile at 2007-11-01 02:04
まきさま:
科学鑑定、できてもしない方がロマンがあっていいかも?
美術史はともかくオペラ!?そんな授業が音大とかじゃない普通の大学で取れるの?びっくりです。
Commented by penguinophile at 2007-11-01 02:12
akberlinさま:
ブルージュ、16年どころか50年前でもさほど変わっていないだろう、と思えるところが魅力ですよね。まぁテナントはほとんど入れ替わっているでしょうが。
ワタクシはムール貝とフライドポテトとベルギーワッフル、全て制覇しましたよ!

ドイツ田舎町での地味暮らしを徒然なるままに。
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