名付け

三年前に市役所で結婚した際、Stammbuch der Familie(家族登録簿)というバインダーをもらいました。その中に今では結婚証明書や息子達の出生証明書が入っています。教会での結婚式の証明書や子供の洗礼証明書の用紙も準備してあるあたり、ドイツはキリスト教国なんだなぁ、と思わされます(ちなみにうちは無宗教家庭なので白紙のまま)。この2年で出生を記した書類の名前がAbstammungsurkunde(血統証明書)からGeburtsurkunde(出生証明書)に変更され、それに伴って両親の学位に関する記載がなくなったようです。

長男が産まれた時は、一週間の期限内に夫が市役所の戸籍役場(Standesamt)に出生届を提出しに行きました。今回は病院に戸籍役場の職員が出張してきており、出産翌日の朝に出生届の用紙を病室まで持ってきてくれた上に家族登録簿の内容を転記してくれたので、署名して病院受付に提出するだけで済みラクでした。
日本側の出生届は生後3ヶ月以内に日本総領事館に提出。その時点で日本語の名前も正式に決まった訳です。
・・・が。




日本を離れて三年余、あれよあれよという間に二人の男の子の母親になっていた。個人的には二人目はできれば女の子が欲しかったけれど、そもそも遅い結婚にもかかわらず健康な子宝に次々と恵まれた事だけで僥倖な訳だし、たかが二人で性別について文句を言うのは確率的にもおかしい気がするし、同性の兄弟なりの利点もあるだろう。それでも名前選びに関してだけは、女の子の方が簡単で楽しかったろう、と思わずにはいられない。

日本の戸籍は姓と名前が一つずつと決まっているが、ドイツではミドルネームを付けられる事もあり、ドイツ語名と日本語名の両方を持っているハーフの人も多いようだ。しかしうちはシンプルに日独共通の名前を一つだけつける方針にした。ところが実際に名前を探そうとすると、これが全然シンプルには行かない。日本でもドイツでも通用する名前というのが、女の子なら可愛いのがたくさんあるのに、男の子だと全然ない。更に英語の名前ならまだ日本でも馴染みがある物が多いが、ドイツ語名は日本人には馴染みがない上、濁音が多く日本語にすると響きが良くない名前が多い。たとえば「ジョージ」「ヒューゴ」「シオン」など、漢字をうまくあてれば最近なら純日本人でもありそうな名前だが、これがドイツ語になると「ゲオルグ」「フゴー」「ジオン」。しかも夫とその家族は、古臭いゲルマン系の名前が大好きで、ドイツと日本のどちらでも通じそうで私がいいかなーと思った「カイ」という名前は、「北欧の名前だから南独の姓と合わない」という理由で却下されてしまった。

「いい名前の中から最善の物を選ぶ」というよりは「最悪の名前の中から許せる物を探す」という作業に、一人目ですら既にうんざりしていたのに、二人目に至ってはもうドブさらえ気分。ウキウキワクワクどころか、考えているだけでイライラしてきて、「痛い思いをして産むのは私なのに、純日本男子名をつけてどこが悪い」と夫に当り出す有様。私はもともと読みやすくてわかりやすい名前が好きなので、最近の日本人の名前は懲りすぎに感じている程なのに、自分の子供の名前が読みにくくわかりにくい名前になってしまうのは何だか不本意。外国で育つ予定の半ガイジンだからしょうがないか・・・と諦めモード。

それでも譲れない条件が二つあった。一つ目は日本人にも発音しやすい名前であること。ただでさえ夫の姓が長くスペリングが珍しく日本人には発音しにくいせいで、私は苦労させられているのに、このうえ子供の名前がFriedrichやらJörgやらになったらもう目も当てられない。二つ目の条件は、日本語で変な意味を持つ名前でないこと。例えば「ゲロ」なんて名前のハーフの子が日本の小学校に体験入学でもしようものなら、いじめられる事は目に見えている。「ハゲン」も「禿げ」といじめられそう。大男に育つ事が遺伝的に確実な子供に「ウド」と名付けるのも抵抗がある。

そんなこんなでほとんど消去法で投げやりにつけた二人の息子の名前。漢字はやはり当て字っぽくなってしまったけれども、意味が良く字面が名前らしくなるように選んだつもり。一人目の名前は、日本人には必ず聞き返されてしまう「名前らしくない名前」だが、ドイツでは(古臭いけど)わかりやすい名前で、私の発音でもだいたい一発で通じて、子供にも覚えられやすい名前らしい。私も二年間呼び続けていい加減慣れた。二人目の名前もやはり私にとっては「名前らしくない名前」。ドイツでも珍しい名前のせいか、はたまた私の発音が悪いせいか、「えっ?」と聞き返される事も多いのだが、たまたま出産に立ち会ってくれた女医さんの息子さんと同じだったので、「これも縁かな」なんて思って納得してみたのである。しかし根っから日本人の私は、短縮して呼んでみたり、「スケ」をつけて呼んでみたり、という有様なのであった。
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by penguinophile | 2009-09-15 15:43 | 子供