人気ブログランキング | 話題のタグを見る

バレンタイン狂想曲

先日、日本に住む友人から「友チョコ」という言葉を教わった。聞けば昨今の若い女子は、バレンタインデーに手作りのチョコレートを贈り合うらしい。それだけ聞けば微笑ましい話なのだが、子供が自力でチョコを作れない場合、親が巻き込まれる事になる。そして子供と一緒に台所に立つ一時をのんびり楽しむ余裕がない親にとって、これは負担になってしまう。私の友人母娘2組は、初心者にも優しい無印良品の手作りチョコキットで乗り切ったらしい。ただしこういうキットを使うと、友人とかぶってしまう事もあるらしい。日本全国でどれだけの親が子供の友チョコ騒動に煩わされているのやら・・・(^^;。

友人が面白いコラムを教えてくれた。↓

著者は日独ハーフのサンドラ・ヘフェリンさん。ハーフとしてのアイデンティティなどをテーマに扱った著書は、気楽に読めるので私も何冊か読んだ事がある。たまに自分が知っている「日本」や「ドイツ」との違いに首をかしげる事もあるが、基本的には「なるほど」とうなずきながら楽しく読める。上記リンク先コラムも、思い当たる節が多い。

例えば去年のクリスマス前に、長男のクラスで保護者代表を務めているお母さんから、「一人2ユーロずつ集めて、担任の先生にプレゼントを贈りましょう」という提案があった。すると他の親から「2ユーロ×30人=60ユーロの贈り物は、高価すぎて先生が恐縮してしまう。半額で十分では?」という横槍が入り、結局一人1.5ユーロずつ集める事になった。誰かが提案した金額を値切るのは、日本ではちょっと考えにくいので驚いたが、どうやら珍しい事ではないらしい、とこのコラムを読んで知った。

個人的には、誕生日やクリスマスに、家族からプレゼントをもらわなくても別に構わない。でももらう場合は、高価でなくてもいいから、ちょっと心が浮き立つような物が欲しい。しかし金銭感覚が極めて堅実(←政治的配慮により精一杯ポジティブな表現)な夫とその家族には、「贈り物といえどもお金を払うからには、役に立つ物でなくてはならない」と固く信じているような節がある。この感覚の違いのせいで、結婚してからしばらくは、フラストレーションがたまった。しかしある年のクリスマスに、義母が「今年の自分達へのクリスマスプレゼントは、台所の水道の蛇口にしたのよ!」と、「お前も見習え」と言わんばかりのドヤ顔で自慢してきた時、私は悟ったのだ。「この家庭で育った子供に、私の感覚を理解させるのは土台無理な話だ」と。ちなみに私は、義母からクリスマスに浴室用スポンジをもらったものの、「もしかしてもう持ってる?あぁそう、じゃあいらないわね」と取り返された事もある。別に義両親のやり方を否定するつもりはなく、自分達の好きなように蛇口でも便座でも贈り合ってくれて一向に構わないのだが、私自身はパートナーに蛇口をプレゼントされて嬉しいとは思えない。それなら「蛇口は必要経費として処理し、プレゼントはナシ」という方が余程すっきりする。それ以来私は、ドイツ人夫にロマンを求めるのは諦め、プレゼントに欲しい物がない時はそのままスルーし、ある時はきっちり型番を指定して請求する、という合理主義に徹している。

上のコラムでも書かれているように、ドイツではバレンタインデーはイベントとしてそれほど浸透していないように思える。広告では見かけるが、実際にどの程度行われているのかは不明。少なくとも子供向けの行事ではないらしく、うちの6歳女子と8歳男子は言葉すら知らなかった。10歳男子は「好きな人にバラとかあげる日」という認識。ところが夫は今年に限ってBAILEYSという私の好きなリキュール酒をプレゼントしてくれた。職場近くの安売りスーパーで特売になっているのを見つけて買ったな、とすぐピンと来たのは、実は私もしばらく前に系列店で見かけて買ったから。狐と狸の化かし合いのような気もしないでもないが、好きな物をもらえれば素直に嬉しいし、「せっかくだからバレンタインデーにあげるか」と一応の気遣いを見せてくれたのも評価しよう(←上から目線!?)。渡し方に全く工夫がなかったのも、今更どうという事もない。しかし夫の最大の失敗は、日付を一日間違えた事だ。つまり、2月13日に私が子供を学校に送って帰宅したら、食卓の上に酒瓶がドンと置いてあったのだ。これではバレンタインのプレゼントだとは気付けない。実際、夫が帰宅して「1日間違えた」と告白するまで、私は「昨日買ったけど出し忘れてたのかな?」としか思っていなかったのであった。それでも一応プレゼントを頂いたし、友達から「ダーリンにチョコ用意した?」とLINEメッセージが送られてきて妙な義務感にかられたので、14日には簡単なケーキを焼いた。クリスマスの余りのサンタクロース型チョコレートと学童で余ったバナナの再利用なのは、もちろん夫にはバレバレだろうが、そんな事を気にするドイツ人ではないどころか、むしろ無駄が減るのを喜びそう。夕飯後に家族で美味しく食べた。平和な一日だった。

ところで最近、浴室の蛇口の調子が悪い。近いうちに取り替える必要があるかもしれない。誕生日にプレゼントされちまわないよう、気をつけねば。

↓長男にもらった162.png162.png162.png
バレンタイン狂想曲_c0076387_01310569.jpg

by penguinophile | 2018-02-17 01:34 | 徒然 | Comments(0)