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パッとしない夏休み

学校が夏休みに入りました!

……が、パッとしなぁ~い(苦笑)。
そもそも今日は子供達と一緒に飛行機で東京に向かっている予定だったんですけど、実際には買い物してご飯作って片付けてパソコンに向かっているんですから、そりゃあパッとするワケがないですよね~。もちろんコロナ禍の影響です。予約していた飛行機が欠航になっちゃいました。「私達の出国日と夫の出張が重なったから、空港まで送ってもらえない。」なんて言ってたのにどっこい全員在宅で、お城での優雅な出張の代わりに終日自宅でPCに貼り付くリモート会議になっちまった夫のお昼休みに合わせてお食事をご提供させて頂きましたよ。「今年は夏休みに入るのが早いから、子供達も長めに日本の学校に通わせられるな。」な~んて思惑は、捕らぬ狸の皮算用に終わっちまいましたよ(涙)。

とは言えドイツー日本便は減便されているものの少しは飛んでいますし、日本のパスポートがあれば入国出来るし、空港からの移動は公共交通機関利用はNGだけどハイヤーはOKだし、入国時の検査で陰性なら14日間の隔離生活の後は普通に外出も出来ます。つまり里帰りは手続き的には不可能ではありません。
その一方、新型コロナウイルスの影響は日本より欧州の方が深刻で、日本はドイツの危険度を「レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」と指定しており、ドイツからの入国は日本国籍者を除き拒否しています。更に日本へ飛ぶとなれば、不特定多数の人と接する場所を通過せざるを得ず、途中で感染する可能性もあるのに、日本の家族は高リスク群。
だから現状では、やはり大人しく諦めて正解……と自分に言い聞かせていたところに、なんとドイツで1500人を超える集団感染騒ぎが起こりました。しかも日帰りでクリスマス市に行った事もある結構近場の町(過去記事参照)です。

ホットスポットは精肉工場ですが、実は精肉工場でのコロナ感染はこれまでも他の地域で問題になっていました。東欧からの出稼ぎ労働者が共同生活をしながら三密環境で3K仕事に従事している上に、作業場の低温環境もウイルスには都合が良いらしく、蔓延してしまったようです。ちなみに精肉工場における出稼ぎ労働者の劣悪な労働環境は、以前から問題視されており、今回の一連の騒動を受けて、来年から契約に関する法制度が改訂されるそうです。ドイツでは肉はすごく安くて、貧乏人の子沢山家庭には正直ありがたいんですが、その低価格が外国人労働者の搾取の上に成り立っているのは、国内で生産される食品の問題だけに、コーヒー豆のフェアトレードより身近な責任を感じます。

集団感染が出た工場があるGütersloh郡(以下G郡。郡(Kreis)は、市町村(Gemeinde)と州(Land)の間の行政単位。)ではまず、工場を閉鎖して従業員を隔離し、郡内の幼稚園や学校を夏休みまで閉鎖する措置を取りました。すると一部の保護者や教師が「子供の方が感染しやすい訳でもないのに、お店は開いているにもかかわらず、幼稚園や学校だけ休みなんておかしい。教育より経済を優先するのはけしからん!」と、工場の前で幼児連れで抗議。いくら感染者が工場に集中しているとはいえ人数が多かったため、「直近1週間の人口10万人当たりの新規感染者が50名」という(日本より100倍ユルい)基準を2つの郡で突破してしまい、「3名以上の会合の禁止、文化施設等の閉鎖」等の制限措置が再導入されてしまいました。1つの郡では明日から制限措置が解除されるそうですが、G郡では少なくともあと一週間ほど継続が決まりました。

G郡の住民にしてみれば、「やっとロックダウンが解除されて、楽しい休暇シーズンの始まりだ、旅行に行こう♪♪♪」というタイミングでこの騒ぎが起きた訳ですから、当然面白くありません。更にドイツ各地で、G郡から来ていた旅行者を送り返したり、G郡のナンバープレートの車に傷をつけたりタイヤをパンクさせたりする輩が現れたりの騒ぎに発展し、「G郡からの旅行者は、48時間以内の検査で陰性との証明書を示さない限り、宿泊禁止」という制限を出す州も続出。G郡では、旅行前に検査を受けようとする住民が、長蛇の列を作りました。ちなみに全然関係ないですが、G郡首長(という表現でいいのかな?ドイツ語ではLandrat)のアデナウアー氏は、西ドイツの初代連邦首相を1949年から1963年に亘って務めたコンラート・アデナウアー氏のお孫さんだそうです。ドイツにも政治家一家はあるらしい。

人間の感覚というのは鈍るもので、「人口1400万人弱の東京で、新規感染者が一日50人以上まで増えている」と聞いても、大ごととは感じられなくなってしまいました。なにせこっちは「人口5万人弱の町で、新規感染者が数日で1500人以上」ですからね……文字通り桁が違うのよ……。ドイツ国内や地続きの隣国ですら「こっちに来るな」とか差別みたいな騒ぎになってる場所の近くから、日本になんて行っちゃいかんよなぁ、とダメ押しを喰らって納得せざるを得ない感じでございますですよ……トホホ(;´д`)。EUは日本に対して渡航制限を解除する用意があるようですが(EUの渡航制限 日本など対象に段階的解除の方向で調整)、こういうのって国内の感染状況がいい国の方が国境を開ける判断は難しいですよねぇ。

一方でこんなニュースも。
緊急事態宣言が解除されてから数週間経ってから過去最多とは、夏休みに入って里帰りする人が増えているのかもなぁ…と邪推してみたり。まぁ人それぞれいろいろな事情がありますからね。私も父が死の床についていた去年だったら、多少無理しても日本に飛ぶ決断をしていたかもしれません。もっとも去年ですらお通夜に滑り込みセーフだったのに、今年だったら全然間に合わなかったけど。今年の里帰りは不要不急ですからね。子供達は「日本でおばあちゃん達に会って美味しいものを食べるのは、絶対にすぐに必要な事!」と主張してますが(笑)。桜は来年も咲くし、日本は来年もあるので、次に里帰りできるまで日本の家族には元気に暮らしていてもらわねば。そして日本の友達とまたオンラインおしゃべり会をしよう(時差の関係で私は真っ昼間になるので、オンライン「飲み会」にはなりにくい)。

ところで今回の新型コロナウイルス騒ぎで、各国が国境を閉じて行く様子を見ながら、「あぁ、日本というのは、非常事態宣言が出るような状況でも、自国民の帰国は拒まない(あるいは拒めない)国なのだなぁ。」と素直に有り難く思いました。更に状況が悪化したらどうなっていたのかわかりませんし、民主主義国家では当然の方針なのかもしれませんが、ベトナムやアルゼンチンは海外在住の自国民の帰国を禁止したと聞きました。ウイルスはパスポートなど見ないから、海外在住なら日本人でも外国人でも感染持ち込みリスクは同じ訳で、水際措置を徹底するなら自国民も締め出した方が簡単で確実に決まっている。でもあえてそうしないのは、自国民が帰る場所を失う事態を避けるためでしょう。武漢在住の邦人を見捨てるどころか引き上げにずいぶん頑張ってくれたからこそ、彼らの帰国が実現したみたいだし。国籍やパスポートの意味、国家の国民に対する責任の意味をちょっと考えさせられました。

by penguinophile | 2020-06-30 02:49 | 徒然 | Comments(0)